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2009年6月1日月曜日

「おじいちゃん、今日はテレビを観たらあかん日やで」

皆様の育児の参考にしていただけたらと、『育児のヒント』を記載 しています。
今回は、湘北短期大学保育学科教授 野口周一先生です。


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 「ノーテレビ・ノーゲーム・デー」を実践しているところがあります。京都市幼稚園 PTA 協議会が 2008 9 月から呼びかけを始めたのです。ねらいは家庭内のコミュニケ ーションを増やそうということです。会長の長屋博久さんはご自身の体験を、次のよう に語っています。 「その日帰宅したら、テレビ好きの父がテレビを観ていなかったんですね。聞けば、幼稚 園から帰ってきた下の子に『おじいちゃん、今日はテレビ観たらあかん日やで』と、消さ れたらしい(笑)。あぁ、子どもの感覚ってこんなものなんやなと」(『同志社時報』第 127 号、2009 4 月)。ほほえましい光景ですね。
 そういえば、私の高校時代には、NHKの『こんにちは奥さん』という番組が茶の間の お母様方に人気がありました。司会役は鈴木健二さんという花形アナウンサーでした。そ の後、鈴木さんは「テレビを消しなさい」という提唱を、『朝日新聞』に3度にわたって 書いたのです。今から 40 年近くも昔のことです(1972 年2月 23 日、3 月1日、8 日付)。 その結果、鈴木さんは「内部告発者」としてNHKに居たたまれなくなり、海外取材班員 として一時国外に避難したのでした。
 私たちはテレビを必需品と思い込んでいるわけですが、子どもたちはどうでしょうか。 テレビを消すことによって、子どもたちは積み木で遊び出したり、本を読んだりして過ご し始めます。その情景を親が認識することにより、親子の絆も深まっていきます。 
 京都の取り組みも、「あれから週に一度、ノーテレビ・ノーゲーム・デーをつくっています」 とか「親が遊んでくれるから楽しみという子どもの声があります」という反響があるそうです。 鈴木さんも番組を担当しているうちに家庭の大切さを知った、せめて夕食時にはテレビを消し なさい、顔と顔を合わせるのが家庭で、それがなくなったら家庭は消滅するとさえ言っていた のです。私たちの米澤健一郎理事長(※注)には娘さんが3人いらっしゃって、ご家庭をお持ちの方もおありとのことです。米澤さんは、その娘さんのご家族もすべてふくめた米澤ファミリー を、電子メールによる家族新聞を出すことによって、その絆としているのです。そのお話を伺ったとき、私は「おお、米澤編集長か、おぬし、やるな」とひそかに唸(うな)りました。
  最近、私が拍手喝采した新聞記事に「社会のドアは食卓に」(『東京新聞』3 月 1 日付)があ ります。社会起業家の駒崎弘樹さんが「市民の意識を変えるには」の問いに、「残業せず、妻 や子供と一緒に食卓を囲めるようにすることだ。家族は社会のドア。家族の話から地域社会や 教育の問題が透けて見え、地域活動や学校に関わるようになる」と語っています。20代の駒崎 さんの発想の柔軟さに感心しました。しかし、子どもたちはもっともっと柔軟なのです。 
 子どもたちにテレビを押し付けていたのは私たち大人なのですね。そして、私たちは子ども に何を期待しているのでしょうか。それは子どもたちの健やかな成長です。その成長をはかる ためには、それぞれのご家庭で簡単に取り組める方法があるはずです。要は、私たち大人ども にやる気があるかどうかなのです。 


 湘北短期大学保育学科教授 野口周一



   ※注 社会福祉法人湘北福祉会(あゆのこ保育園)理事長、学校法人ソニー学園(湘北短期大学)理事長