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2010年2月1日月曜日

『つきのよるに』


作・絵:いもとようこ
(岩崎書店 2004 年) 



 動物の子どもは生まれたと同時に、その場で踏ん張 り、立ち上がり、親と同じように力強くたくましく、まさ に力強い「生きる力」を見せてくれるものです。この絵 本の中ではシカの親子の「子別れの儀式」が描かれ ており、自然界で生きていくことの厳しさを痛感させられます。
 しかし人間の子どもは、「生理的早産」といって、およそ1年運動機能が 未熟な状態で生まれてきます。そのため、大人からの十分な保護や養護を受け なければ生きていくことができません。大人はミルクやおっぱいなど十分な栄養 を与え、十分な睡眠や安全を確保し、子どもが「生きていく」ために大人が一生 懸命お世話をし、育てます。そういった時期を経るからこそ、子どもとは未熟なも のである、大人がいなければ生きていけない存在である、といったような儚さや 脆さ、弱さを感じながら育てていくのかもしれません。
 それゆえに大人はつい、 あれもこれも先回りして子どもにつらい思いや大変な思い、苦労や困難を遠ざ けながら、子どものためにと安全な道を整えてしまいがちです。ですが、「生きる 力」を育てていくためには、日々の育児の中で、あれもこれもやってあげたいと いう親心をちょっぴりおさえて、子ども自身が成長しようとする力、生きようとする 力をじっと見守る、ということなのかもしれません。
 子どもがこれから成長していく中で、さまざまな困難や壁にぶつかったとき、それを乗り越えていくためには、 身近な大人からの愛情を受け、子ども自身の自己肯定感が育っていることが大切です。「自分で!」「イヤ!」という自我の芽生えが始まったら、自立への第一 歩です。自己主張は、大好きな人に見守られている安心感があるからこその、 自立へ向けた成長の証しです。子どもの「生きる力」を育むということは、大人も 共に育っていくということなのかもしれません。そんな「生きる力」についてしみじ みと考えさせられる絵本です。 


ほっと れもんてぃ保育士 齋藤麻美