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2010年2月1日月曜日

「親子のまなざしとコミュニケーション」

皆様の育児の参考にしていただけたらと、『育児のヒント』を記載しています。 
今回は、東京大学大学院教育学研究科教授 秋田喜代美先生です。

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 ある乳児のプレイルームを行っている私の友人が、乳児をもつお母さんたちが携帯を片手にメール をしながら、授乳をしているケースが最近増えてきていて、とても心配と言う話をしてくれました。忙しい お母さんたちの気持ちもわかるけれど、授乳の時の身体距離は、親子のアイコンタクトがあいやすく、 コミュニケーションのベースができるとても大事な時間です。それなのに赤ちゃんは、携帯をしている ママの顔を見ているなんてさびしいねえと話を交わしました。(ほっと れもんてぃのお母様たちの中に はおそらくそのような方はおられないのではないかと思うのですが・・)。授乳時に吸っては休み吸って は休みのリズムを繰り返すのは人間だけで、他の霊長類の赤ちゃんは空腹を満たすために一気に お乳を吸い続けることが分っています。それに対して、人間の場合にはこの吸った後の休みの時に お母さんは赤ちゃんに声をかけたりゆらしたりしているというデータが明らかにされています。この授乳 のメカニズムの中に親子のコミュニケーションの礎のメカニズムが入り込んでいるといえます。

 まなざしを交わしあうことは、愛着の形成につながります。そしてそのうち自分の好きなお母さんやお 父さんの顔だけではなく、それらの人が見ている対象を自分も見るということが起こります。これは発達 心理学では共同注意(共同注視)と呼ばれることですが、一緒に同じものをみつめたり、指差しをしあ ったり、言葉を交し合うことで、その対象に対する興味や学びが子どもの中に生まれます。そしてそこ に、間主観性といわれる親子での一体感が生まれるのです。それぞれに、子どもはビデオやおもち ゃ、お母さんはメールやテレビではなく、まなざしを交し合う時間が親子の絆を作り、また時に子どもの 目線にたって物事をみることで子どもの気持ちがわかったりしてきます。

 また子どもはおかあさんやおとうさんの表情をよくみています。外で悪いことをしたりすると面とむかって 叱れない時に口では優しいことを言いながらも、目元は厳しく子どもを睨み付けるという行動はないで しょうか。これは、言葉と表情の不一致でダブルバインド状況といわれます。このような時にも子どもは、 まなざしの方が正直な感情をあらわしていることをちゃんと読み取っているのです。時にきっときつい まなざしをしても、その後「もうしないよね」「わかっているよ」というやわらかなまなざしで子どもは反省 したり温かさを感じ取ったりします。「目は口ほどにものを言い」といいます。どんな目線でどのように お子さんと言葉を交わしているか、ふと立ち止まって見てみてください。


秋田喜代美(東京大学教育学研究科)