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2015年12月28日月曜日

メディアと子ども~大人の責任・小児科医の責任~

皆様の育児の参考にしていただけたらと、『育児のヒント』を記載しています。
今回は、厚木市下荻野にある馬嶋医院 院長 馬嶋順子 先生です。
 

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   待合室で、スマートフォンを使って遊んでいるお子さんを見かけることが多くなりました。1歳過ぎの小さなお子さんでも、上手にタッチパネルを使って遊んでいます。ゲームはできる、写真は撮れる、音楽は聴ける、友達との楽しいやり取りはできる、分からないことはすぐ調べることができる、ニュースも読むことができる、電車の時間もすぐ分かる等々色々な機能があります。私は小児科医ですので、お子さんの発達に大きな影響を及ぼすのではないかと心配しています。私の所属する日本小児科医会は、子どもとICT(スマートフォン・タブレット端末など)の問題に関する提言を行っています。東京小児科医会会報に「メディアと子ども〜大人の責任・小児科医の責任〜」というタイトルの提言がありました。その中から、メディアが子どもの与える影響、特に発達に与える影響について、一部抜粋してお伝えしたいと思います。

1. 子どもの育ちへの影響

体力・運動能力の低下:乳幼児期の走る、投げる、跳ぶ、突く等の7つの運動動作の継続的な調査から1985年と2007年の比較では7項目全て低下を示しており、幼児期の運動不足が明らかになっている。2012年、文科省からは幼児期運動方針が出されており、1日60分の体を使った遊び時間の確保が求められている。

視力の悪化:1960年代前半のテレビ普及の初期、1988年頃のテレビゲームの普及がほぼ完了した時期、パソコンや携帯の普及が進んだ2007年と徐々に裸眼視力低下が進み、2012年には8割を超える高校生が裸眼視力1.0未満となっている。近視の原因は遺伝と環境であるが、外遊びの激減(広い空間で目を使わない)、室内遊びの増加、電子メディアへの接触時間の長時間化など近作業に費やす圧倒的な増加が原因と考えられている。

言葉の発達への影響:授乳中のアイコンタクトは乳児、保護者双方にとって情緒の交流、コミュニケーションする上で重要なやり取りであることを考えれば、授乳中はゆったりとした気持ちで赤ちゃんと目を合わせながら授乳することの必要性を小児科医は保護者に啓発していくべきであろう。
 
テレビやビデオの一方的な刺激から乳児が言葉を獲得することはない。乳幼児が言葉を獲得していくには、特定の人に愛着を形成しながら、それを土台にして、適切なタイミングで実体験とともに、言葉環境を日常的に繰り返し提供されることが必須である。

言葉が使えるようになったら、さらに自分の話を聞いてくれる相手が必要となる。言葉を使って出来事を正確に相手に伝える、気持ちを伝えることを家族、友人との直接的なやりとりの中で、文字で表現される以外の声の高さ、リズム、速さそれに加えて表情、仕草等の言葉によらないコミュニケーションを含めて、人としてのコミュニケーションを身につけるためには多くの時間を必要とする。発達期にある子どもたちに、その時間を確保するのは大人の役割であろう。テレビを見ながら、黙々と食卓を囲む、同じ食卓を囲みながらそれぞれ勝手にネットで他の人と繋がっていることが日常的に見られていることは危機だと感じる。乳幼児の愛着形成や言葉の発達、その後の子どもたちのコミュニケーション能力の獲得や社会化にとって何が大事かを大人たちは真剣に考えるべきである。
④ 五感の発達への影響
視覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚などの五感や深部知覚などの発達は具体的な体験がそれぞれの知覚神経を経由して脳への刺激となり発達していく。発達期の子どもにとってはこれらの発達を促すためには、バランスの良い実体験が不可欠であり、電子映像メディアからの人工的な視覚、聴覚刺激だけに過剰にさらすことの影響には注意が必要と思われる。
東京小児科医会報 20153月 日本小児科医会理事 内海裕美 メディアと子ども〜大人の責任・小児科医の責任〜  一部抜粋•改編
以上、少し難しくなりましたがメディアが子どもたちに及ぼす影響について述べました。健やかな子どもの成長のためには、今何が必要なのか、周囲の大人が考える時だと思っています。         
 
馬嶋 順子

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